広瀬浩二郎 氏 KOJIRO HIROSE
国立民族学博物館准教授。自称「座頭市流フィールドワーカー」、または「琵琶を持たない琵琶法師」。
1967年、東京都生まれ。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から京都大学に進学。2000年、同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“触”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施している。最新刊の『それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける!』(小さ子社)など、著書多数。
目に見えないものを追求、参加者に「蒸気」を発してほしい
目が見えなくなって、眠っていた触覚に気づき、目に見えないものを追求することが研究の柱となりました。 2001年に国立民族学博物館に着任して以来、障害者などを排除しない誰もが楽しめる博物館を作ろうと考えてきました。昨年開催した「ユニバーサル・ミュージアム」(展示物に触れる展覧会)はその集大成です。
「触ってわかるもの」には2段階あります。1つ目は温度、重さなど見るだけでは分からないもの。2つ目は物の背後にいる人を感じること。その物を手で作って伝えてきた人の行為を追体験。そんな意識を持つことが大切です。 STEAMのうち、私の担当はアートでしょう。アートについて考えるようになったのはアメリカに留学した時で、英語でのコミュニケーション上達のために合気道道場に通いました。英語で武道はマーシャルアーツです。
アートとは多様な自己表現の手段です。
STEAMは蒸気の意味もあります。蒸気も触って勢いや熱を感じるもの。日経STEAMの参加者のヤカンに火を付ける役割を担いたい。個々の参加者には触感豊かな蒸気を発してほしいと思います。