文理を超えた研究、外部企業と共同開発も

安田女子中学高等学校では2021年4月に高校生向けの「STEAMコース」を開設しました。先が見えにくい社会情勢の中で、正解のない問いに取り組み新しいものを生み出す力を身につけて、社会をよりよくしていくことができる生徒を育てたいという想いで、STEAM教育を導入しました。
STEAMコースの募集は1学年30人で、全体の1割程度です。様々な生徒がいて、志望大学や分野に偏りはありません。自分のやりたいことに挑戦したい生徒が多く、得意分野を見ると文系理系半々くらいでしょうか。他の「特進コース」と「総合コース」は文系理系に分かれますが、STEAMコースは文系理系に分かれず同じクラスのままです。
コースの一番の特徴は、週4時間で実施している、外部企業などとコラボした企画を行うProject-Based Learning(PBL)という授業です。高校1年の最初の半年は準備期間で、企業とのプロジェクトにつながるスキルを学びます。生徒1人1人にiPadが貸与されており、アプリで既存曲を使った映像作品を作るなど、短期プロジェクトに取り組みます。そして、ベースとなるデザイン思考やチームワークを学んでいきます。
高校1年の後半から高校2年の前半にかけて、1年間の長期プロジェクトに取り組みます。現在は4つのプロジェクトを進めています。
- 広島の企業とのバスオイルの共同開発
- STEAM教材を制作している企業との新たな教材の共同開発
- 地元大学と連携してロボコンへの参加
- 研究機関と連携して河川の水質改善の研究
ロボコンはWRO(World Robot Olympiad)へのエントリーを目指しており、与えられたミッションをクリアできるようにロボットを組み立て、プログラミングしています。水質改善では、学校のそばを流れている京橋川のプランクトンを調べてヘドロを分解する種を取り出し、どういう環境で増やせるかを研究しています。

今年の1年生が準備期間を終えたら、2学年をシャッフルしてプロジェクト数を増やす予定です。すでに1年間学んでいる生徒もいるので、「こんなことをしたい」という自発的なプロジェクトが出てくることを期待しています。現在は外部企業との連携は教員主導で行っていますが、将来的には生徒にも担当してほしいと思います。
PBLの授業では成績をつけています。活動にどう関わっているか、どんな成果を上げたかに対して、プレゼンの内容も含めて評価します。1年生の準備期間では個々の取り組みへの関わり方やふり返りも評価しています。

PBLの指導教員は文系理系合わせて6名です。準備期間の1年生担当に2名、2年生の4つのプロジェクトに1名ずつついています。私は水質改善研究の担当です。教員は年1回、東京の教育プログラム開発会社の研修を受け、デザイン思考について学びます。2020年度にSTEAMコースを準備した際に「型にとらわれない」「まずやってみる」「失敗を恐れず挑戦し続ける」という3つの基本となるマインドセットを定めました。指導に困った場合はそこに立ち戻りながら、生徒と一緒に試行錯誤をしています。
その他の特徴として、自学自習のInterest-Based Learning(IBL)という授業が週3時間(2年生は4時間)あります。IBLでは生徒各自がやることを決めます。学習アプリでやりたいことを勉強したり、自分たちでプロジェクトを考えコンクール出場を目指したりしています。取り組んでいることをYouTubeなどで外部に発信することも模索しています。
これらの取り組みを通して、生徒たちが失敗を恐れずに挑戦するようになっており、自分たちで身の回りの問題を解決する企画をたてたり、外部のコンクールなどに積極的に応募したりと、想定以上の成長をしています。