STEAM教育で課題研究の深化を目指す

本校は「兵庫型STEAM教育」の実践モデル校として、2020年度から3カ年の期限でカリキュラムの開発や実践などの取り組みを進めています。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校でもあり、当初はSTEAM教育を理数科の指定科目として位置付けようという意見もあったのですが、課外で実施する特別講座と、通常授業のどこかにSTEAM教育を取り入れるといった2本立ての形で実施しています。STEAM教育の導入により、5年前から普通科も含め全校に広げた課題研究の深化につなげることを目指しています。

特別講座で多彩なプログラムを実施
特別講座は1、2年生を対象に、主に夏休みを中心に実施しますが、夏休み後も放課後に続けて行っているプログラムもあります。講座のメニューついては生徒たちが興味を持って受講したくなるような様々なテーマを設定しています。プログラムの多くは教員側で考えていますが、昨年度は、生徒が企画し実施した講座も開講できました。講座内容によっては、専門の知識を持つ大学や企業に協力をお願いしています。
昨年度はドローンによる空撮、起業計画づくり、幼児向けに自然科学を啓発する「かがくえほん」づくり、動画編集ソフトの活用、3Dプリンター、レーザー加工機の体験教室など、多彩なプログラムを実施しました。自由参加なので、参加する生徒たちは熱心に取り組んでおり、受講してよかったという感想がほとんどです。現在の3年生が入学した年からSTEAM教育の実践を始めましたが、47.7%の生徒が特別講座を1回以上受講しています。課外に実施していることを考えると、参加比率はかなり高いと思います。

地域活性化の政策提言に高い評価
特別講座を単年度で終わらせるのではなく、次年度に発展させていく試みも進めています。例えば20年度には経済産業省などが提供している地域経済分析システム(RESAS)を使い、ビッグデータの解析から他地域と比較しながらまちづくりを考える地域デザインに関する講座を実施しました。加古川市の課題を発見し、インタビューやアンケート調査などを加えて具体的な地域活性化の政策提言を取りまとめ、加古川市長を含む30名以上の加古川市職員に対してプレゼンしました。21年度にはこれをベースに、インタビューやアンケート調査後に政策アイディアをまとめました。アイディアを形にする過程では、「放課後プロフェッショナル」と題し社内有志が立ち上げたNECプロボノ倶楽部15名の方々にボランティアの形でアドバイスをしていただき、内容をブラッシュアップすることができました。

内閣府が主催する「地域創生☆政策アイデアコンテスト2021」で、地域デザインをテーマとした加古川市の地場産業である靴下の振興策を提言した地場産業PR班、空き家からの産業創出を考える空き家班、陰陽師をテーマにした観光を提言した陰陽師ツーリズム班の3班がそろって近畿経済産業局長賞を受賞するなど、これらの取り組みは高く評価されました。
ノウハウの公開や他校生の講座参加も
22年度はSTEAM教育のモデル校としての最終年度です。これまでの取り組みを通じ、特別講座を受講した生徒が習得した知識を生かして課題研究のグループを引っ張っていくような良い効果も生まれています。今後の目標としては、本校が取り組んできた特別講座を他校でも実施できるよう、ノウハウや指導案集の公開に加え、講座に他校の生徒が参加し地域で交流できるようするといったこともできれば、と思っています。
特別講座のなかで一部取り入れたこともありましたが、本校の卒業生が講師となって在校生に教えるような取り組みも進めていきたいと思っています。先輩たちの姿が在校生のロールモデルにもなっていくのではないかと期待しています。
特別講座の中心となる8月に、STEAM発表会を開いていますが、昨年はヴァーチャル空間システムのオヴィス(oVice)を使って仮想空間での発表を行いました。中学生にも参加をオープンにしたのですが、フリートークセッションで仮想空間のなかで高校生と中学生が熱心に交流をする場面が見られるなど、こうしたシステムを使うことで新たなコミュニケーションが生まれる可能性も感じています。
