NIKKEI STEAM

STEAM COLUMN 識者・教授・教諭によるSTEAM関連コラム

2023.11.28

エシカル消費の学びを軸に連携進める

徳島県立城東高等学校「城東高校エシカルクラブ」

徳島県立城東高等学校では、人・社会・地域・環境に配慮したエシカル消費を研究・実践する「城東高校エシカルクラブ」の活動と、学内や地域、企業など外部との連携を活発に進めている。同クラブは課外活動の位置づけで、メンバーは23年11月現在、12名。同校ではエシカル消費をテーマとした探究活動も授業に取り入れているが、担当の永野秀和教諭は「クラブのメンバーにはこうした活動などで、インフルエンサー的な役割を期待している」という。

「エシカルクラブ」は徳島に設置された消費者庁の分析・研究機能拠点と連携して、同県内の公立高校すべてに設置された。2019年から全国の高校生等が、エシカル消費の推進や実践の成果などを発表する「エシカル甲子園」も開催されているが、22年12月の大会に同校はグローバル枠代表として出場し、特別賞を受賞した。この大会ではインドネシアの高校や同校に在籍している留学生との交流、ごみゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト宣言」で知られる同県上勝町での探究活動、家庭クラブの生徒による国際会議について発表した。

LINEスタンプ考案し普及・啓発

7月に開催された「日経STEAM2023シンポジウム」の高校生SDGsポスターセッションでも「エシカル消費」について発表した。このセッションに携わった生徒は「様々なイベントに参加するなかで、エシカル消費の認知度が低いと感じたことをきっかけに、研究を進めた」と話す。ポスターではエシカル消費の認知度の推移について、徳島県内のデータを示しながら、エシカル消費の事例を説明。普及・啓発を進めるため、自分たちでLINEスタンプを考案したことを紹介した。

このLINEスタンプの「えしかぶ」の作成では地元のイラストレーターから指導を受け、「スタンプの売上げを誰かの為に使えないか」という生徒の声をもとに、スタンプの販売を県内のエシカル消費自主宣言企業のひとつである就労支援センターに委託することで、販売収入が同センターに入る仕組みもつくった。

7月のポスター発表以降、イベントなどでPRしたこともあって、スタンプの購入者は徐々に広がっている。「このほかにサスティナブルファッションに関連するスタンプも準備中」(メンバーの生徒)で、上勝町の「ゼロ・ウェイストセンター」を拠点に環境問題に取り組んでいる大塚桃奈さんからもスタンプについてのアドバイスをもらっているという。

上勝町での探究活動後、同町の取り組みについての英語のポスターもつくって
学内で発表した。
ポスターの作成には同校に在籍するカナダやノルウェーの留学生の協力も
仰いだ。

「エシカル・カーテン」の作製も

同校の家庭クラブとの連携も進めている。使わない布を集めて更衣室用の「エシカル・カーテン」を作製したり、プラスチックごみ削減のために回収に取り組んでいるペットボトルのキャップを原料に、キーホルダーを作製したりしている。キーホルダーは学内で使用しているほか、インドネシア研修に行く生徒が持参するお土産としても活用している。

今後も外部での発表や連携に意欲的だ。ある生徒は「23年の『エシカル甲子園』にも開催県代表で出場することが決まったので、これまで進めてきたLINEスタンプの取り組みなどを発表したい」と話す。また他の生徒からも「(上勝町の)大塚さんにサスティナブルファッションや服のリメイクについてもっと教えてもらい、クラブで取り組んでいきたい」「これまで捨てられていたコンタクトレンズの容器を回収している業者がいると聞いたので、どういう形で協力できるか考えている」といった声が聞かれた。永野教諭も「四国ではペットボトルの回収ボックスを全店に設置するコンビニエンスストアなど、エシカル消費や環境関連に取り組む企業が多い。今後はこうした企業との連携を広げていくことができれば」と話している。

コラム一覧