NIKKEI STEAM 関西発、共創の交差点

EVENT REPORT 日経STEAMの講演会・イベントのレポート情報

自分だけの答えをつくる美術鑑賞ワークショップ
シンポジウム 日経STEAM2022シンポ

学生が新たな価値を生み出す

7月28日、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)で「日経STEAM2022シンポジウム」が開催されました。関西圏を中心に約300人の高校生・大学生が集結。常識にとらわれない自由な発想をもとに、「未来を創る」ための新たな方法について、熱い議論が交わされました。現役女性研究者の座談会やワークショップなども実施され、会場内の様子はオンライン配信されました。

開催日2022年7月28日

学生サミット 未来の地球会議

この星の明日を守る方法、海外チーム交えて議論

グローバル化する現代社会を生き抜く人材を育てるため、文部科学省もSTEAMを取り入れた教育手法を明確に推進しています。この流れの中で開かれた今回のシンポジウムでは、メインイベントとして高校生・大学生による「学生サミット 未来の地球会議」を開催。生徒・学生が環境問題や資源問題など自分たちで課題を設定し、常識にとらわれない手法で「未来の地球を守る方法」をプレゼンテーションしました。国内の11高校・ 7大学、海外からも5チームが参加し、壇上でスライドを用いて アイデアを発表。その内容を、独自性などの観点から5人の有識者が審査するというコンペティション形式が採用されました。

四條畷高校がピクトグラムの研究で最優秀賞を受賞
四條畷高校がピクトグラムの研究で最優秀賞を受賞

最優秀賞に選ばれたのは、四條畷高等学校のチーム「ピクトグラムず」。昨年の東京五輪で注目されたピクトグラム(絵文字)をテーマに、分かりやすさに影響する要素をアンケート結果から分析。明らかになった法則性をもとに、さらに改良したデザインを生み出そうという試みです。審査員を務めた中島さち子氏は「アイデアを形にできること自体が素晴らしい。世界の人々がより良く使えるピクトグラムの実現に向け、今後も探求を続けてほしい」とたたえました。そのほかクリエイティブ賞はエアコンの節電方法を研究した大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎のチーム「フォンダンクォーツ」が、グローバル賞は資源再利用を促進するための業者への小型ローン制度を提案した日越大学(ベトナム)のチーム「Etsu Color」がそれぞれ受賞。steAm特別賞には軌道エレベーターを活用した風力発電を発想した奈良学園高等学校のチーム「焼肉定食」が、パナソニック特別賞には学生食堂へのビーガン・ハラルフード導入を推進した兵庫県立大学のチーム「S&I Club」が選ばれました。

高校生SDGsポスターセッション

持続可能な社会への取り組み、見学者と意見交換も

研究の成果を1枚に集約、足りない部分は口頭で説明
研究の成果を1枚に集約、足りない部分は口頭で説明

会場内の一角で行われたのが「高校生SDGsポスターセッション」です。国際社会共通の問題意識として注目される「持続可能な開発目標」の達成に向けて、国内13高校13チームが写真や図表などを用いたポスター発表にチャレンジ。当日は制作した高校生が、見学に訪れた他校の生徒と発表内容について意見を交換する場面も多く見られました。このイベントを担当した宮野公樹氏の考えのもと、当日投票の多かった最優秀賞、優秀賞に加えて、制作開始当初から最も成長が感じられた特別賞の3賞を設定。最優秀賞には使用済み廃棄油をリサイクルしての石鹸作りに取り組んだ、神戸高等学校のチーム「Eco Soaps」が輝きました。「このままじゃあかん!SDGs」とのメッセージで目標達成への問題点を洗い出した京都女子高等学校「女坂4teens」が優秀賞、安田女子高等学校「Yasuda butterfly」は紙をめくって内容を見るユニークな方式の「MY幸せストーリー」を発表し特別賞を受賞しました。

女性研究者座談会

会場からの質問、第一線のパネリストが答えます

モデレーターの宮野氏が会場からの質問を11人に投げかける
モデレーターの宮野氏が会場からの質問を11人に投げかける

メインステージでは学生サミットのプレゼンテーションに続き11大学の女性研究者が登壇し、会場からの質問に答えました。Q&AツールのSlidoには「すぐに結果が出ない研究でモチベーションを保つには?」などの問いが寄せられ、「結果がでないことが立派な結果。なぜ結果がでないかというデータが取れる」といった第一線の研究者ならではの答えが返ってきました。

体験コーナー

目を輝かせ新たな技術に触れる

ダイワボウ情報システムは3Dプリンター体験を提供
ダイワボウ情報システムは3Dプリンター体験を提供

企業・大学による体験コーナーも人気を集め、高校生らが目を輝かせて新しい技術に触れていました。
出展内容は以下の通り。

  • ダイワボウ情報システム(DIS):プログラミング構築、3Dプリンターでの創作、VTuber体験など
  • 大阪公立大学:起立動作訓練支援ロボットの紹介など
  • 武庫川女子大学:鏡映描写による心理学実験など
  • 四国大学:STEAM教材SPACEBLOCKを使ったプログラミング体験

ワークショップ

アートから自分の答えを

美術品鑑賞を通じて発想を広げる
美術品鑑賞を通じて発想を広げる

美術講師・アーティストの末永幸歩氏は、精密に再現された2枚の巨大な屏風絵の複製品(「綴プロジェクト」制作)を題材に、新しいアートの見方を紹介しました。参加者は思い思いの角度や距離から作品を鑑賞し、感じたことなどをメモしていきます。それを基に3人程度のグループに分かれて対話し、発想を広げました。末永氏は「アートの正解は一つではありません。既存の見方を疑ったり、様々な見方を横断したりすることで自分なりの答えを見つけて下さい」と結びました。

触れることで多くを学ぶ

国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏のワークショップでは参加者を2人1組に分け、1人はアイマスクで視界を塞ぎ、パートナーのひじに触れた感覚を頼りに歩きました。動きは次第に滑らかになり、ダンスをするように軽快に動く人もいました。さらに全員が視界を塞ぎ、形状などから玩具や世界各地の楽器の仕組みや使い方を類推しました。広瀬氏は「目から得られる情報量は多いですが、触覚を研ぎ澄ますと別の世界が体験できます」と説明していました。

NIKKEI STEAMゼミ

10年後のICT活用案を提案、京都女子高など受賞

シンポジウムではゼミ参加者が集まり記念撮影
シンポジウムではゼミ参加者が集まり記念撮影

日本経済新聞社とダイワボウ情報システム(DIS)が開催する日経STEAMゼミには高校・大学合わせて11チームが参加。「10年後の未来を見据えICT(情報通信技術)を活用した教育を考える」という課題に、ICT活用案が数多く提案されました。シンポジウムで京都女子高等学校の「鸞翔鳳集(らんしょうほうしゅう)」が最優秀賞に輝きました。提案した「感覚コピー」はICTを用いてプロの感覚を共有するという内容。優秀賞には、同時翻訳機能で言語の壁をなくし世界平和の実現につなげるというテーマの大阪経済大学「岡島研究室4期生」と、三次元立体映像を使った過去の偉人との対話を提案した清水ケ丘高等学校の「Shimizu」が選ばれました。

※中島さち子氏、宮野公樹氏、末永幸歩氏、広瀬浩二郎氏は日経STEAMアドバイザーです。プロフィールはこちら(https://steam.nikkei.com/advisor/