
管理栄養士・栄養士を目指す学生たちが「お酢 」を使った新商品企画に挑戦!
大阪樟蔭女子大学(東大阪市)は日本経済新聞社との連携講座であるプロジェクト型インターンシップを開催した。
大阪樟蔭女子大学(東大阪市)は日本経済新聞社との連携講座であるプロジェクト型インターンシップを開催した。参加した学生たちは、日経MJを教材に食品業界のトレンドに触れながら「お酢」を使った新商品企画に挑戦。「お酢、えぇやん!」を体現した新商品を生み出せるか──タマノイ酢株式会社(大阪府堺市)の協力のもと進められた。
タマノイ酢から提供された課題は3種類。Aグループは「お酢ドリンク」の開発に取り組んだ。同社の主力商品、はちみつ黒酢ダイエットのようなビネガー(お酢)ドリンクを作り出したい。Bグループの課題は「機能性ドリンク」。肌トラブルや睡眠トラブルの対策といった機能を盛り込んだ商品を目指す。Cグループは「新しいお酢」の開発に挑んだ。生酢(きず)市場に活気をもたらす商品づくりを狙う。
本講座は今年4月から11月までの8カ月にわたって実施され、学生たちは多くの工程に携わった。タマノイ酢担当者からのレクチャーに始まり、ディスカッションによるアイディアの抽出、マーケティング調査、商品コンセプトの策定、ターゲットや売り場の絞り込み、コスト計算と価格設定、さらに試作品製作では成分の検討や配合などに試行錯誤した。加えてパッケージデザイン制作、広告宣伝方法の考案までやり遂げたことで、商品開発における一連の過程を体験、その全プロセスでタマノイ酢は伴走者を務めた。要所で担当者が来学すると共に専用スレッドで毎回の議事録を共有、さまざまな相談に対応して学生らをサポートした。
ポイントは本講座が商品化にも道を開いていたことだ。そのため品質とコストの両立など求められる水準も高度になる中、各グループは高いモチベーションを維持しながら困難な課題に取り組んだ。
全22回に及んだ講座の締めくくりは最終日の成果発表会。Aグループは「酢×スムージー」の新感覚ドリンクを、Bグループは健康作用のあるお酒風ドリンクを、Cグループは黒酢と生姜を合わせた調味料を提案した。いずれも周到な準備をして臨んだことをうかがわせる優れたプレゼンテーションだった。

【講 評】
タマノイ酢 専務取締役 播野 貴也氏
大事なのは結果よりもプロセスであり、そのエッセンスが詰まった発表を聞かせてもらいました。AグループはTik Tokを活用したプロモーション戦略が光りました。Bグループはお酢と美容という視点が実に良かった。Cグループは広告動画やレシピまで作成した行動力と、リピーター率を増やす戦略に目を付けたことが素晴らしいと感じました。商品開発に正解はありません。今回多くの苦労をされたでしょうが、それを今後の糧にしてほしいと思います。本講座で学生さんと接して、我々も多くのことを学ばせていただきました。お礼申し上げます。
【大学統括】
大阪樟蔭女子大学 健康栄養学部 川端 康之教授
お酢をテーマに学んだ8ヵ月間、試行錯誤の連続だったと思います。コスト計算にまで取り組むのは初めてのことで、私としてもここまでやるかという思いで見ておりました。この貴重な経験を就職活動、ひいては卒業後の仕事、そして今後の人生に役立てていただきたいと思います。これからも大切にしてほしいのは、もう一歩踏み出す行動力です。この場にいるだけで、皆さんはすでに行動を起こしているのですが、これにとどまることなく、次に向けて行動を続けてください。
連携講座プログラム
グループA 挑戦するテーマ お酢ドリンク
所谷さん 鈴木さん 戸口さん 加藤さん 岡田さん 能勢さん
グループB 挑戦するテーマ 機能性ドリンク
佐野さん 竜崎さん 生田さん 奥本さん 小林さん
グループC 挑戦するテーマ 新しいお酢
倉員さん 高山さん 吉川さん 八木さん 安井さん
1 グループディスカッション
各チームでブレーンストーミングを実施。商品企画に向けてアイディア出しを行った。議論だけではなくスーパーやコンビニに出向いての市場調査も交えて発想の幅を広げた。

2 グループワーク
アイディアをまとめた上で、アンケートによるマーケティング調査を実施。試作にも取り掛かる。試作は学内研究室で3週にわたり行い、2週目にはタマノイ酢担当者も立ち会った。
3 中間発表
タマノイ酢担当者を迎え、試作品の内容および前期の活動についてグループごとに報告した。仮商品名、商品特性、パッケージデザインのイメージ、価格を含む5W2Hなどを発表。発表後はタマノイ酢から講評を受けた。
4 工場見学
タマノイ酢本社工場を訪問し、製造ラインを見学すると共に質疑応答の機会も与えられた。複雑な製造工程を見たことで、学生たちはとくにコストに対する意識を高めた。


5 1DAY仕事体験
タマノイ酢本社へ出向き、企業概要のレクチャーや同社製品の試飲などを通じて会社について学んだ。最後は代表取締役社長・播野勤氏が直接学生たちの質問に答えた。
6 成果発表会
8カ月にわたる活動の集大成として、審査員を務めるタマノイ酢担当者、大学教職員の前で最終のプレゼンに臨んだ。結果は最も高得点を得たCグループが優秀賞を獲得した。

グループA
飲み方にルールがある「酢 moothie(ス・ムージー)」
「お酢×スムージー」の新感覚ドリンク。お酢ドリンクを飲む機会が少ないZ世代に向けて開発した。味はキウイとミックスベリーの2種類で、お酢が苦手でも抵抗なく飲める。成分が沈殿するため振って飲む。プロモーションにTik Tokを活用。ユーザーに「振るダンス」の投稿・拡散を促す。

A group リーダー 鈴木さん
何度も心が折れそうになりましたが、やり遂げることができました。一番学んだのは最後までやり抜くことの大切さです。今後、インターンシップや就職活動などの機会でもこの姿勢を貫いていきます。
グループB
お酒風の機能性ドリンク「Waceto(ワチェート)」
商品名はWineとイタリア語の酢(aceto)を掛けた造語。お酢のほかにビタミンCやクエン酸など美容成分を多く配合しつつ、甘口ワインのような味に仕上げた。市場に機能性を謳ったお酒風ドリンクがなく、その新規性で差別化を図る。機能性ドリンクにはないワインボトルに似た容器の形もポイント。

B group リーダー 竜崎さん
商品開発に携わる仕事を目指しているので、この取り組みに参加しました。開発の難しさも楽しさも体験する中で視野が広がり、マーケティングにも興味を持つようになり、進路の選択肢が増えました。
グループC
マイルドなしょうが酢「しょうがッス!」
調味料や付け合せとして使える「新しいお酢」。従来の生姜にないマイルド感を出し、子供を持つ主婦層の継続的な購入を狙う。パッケージのキャラクター「しょうがッス!くん」のLINEスタンプ展開や、二次元コードからアレンジレシピサイトにアクセスするとポイントが貯まる仕組みも考案。

C group リーダー 八木さん
試作やコスト調整などを体験して商品開発の大変さを実感。身近な製品も苦労の末に、生み出されていることを知りました。今回の経験を発展させるためにも、このような機会があればまた参加したいです。