日経STEAM
2024シンポジウム
高校生14チーム「SDGs」
テーマに力作ずらり
~学生取材班がみたデジタルアート展示&発表会の軌跡(前編)
「日経STEAM 2024年シンポジウム」が7月30日、大阪市住之江区のATCホールで開かれました。シンポの柱のひとつであるデジタルアート展示&発表会には、あわせて13校14チームが参加。持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにした作品で競い合いました。14の作品はいずれも3カ月ほどをかけて高校生自ら構想・企画し、完成品へと仕上げたもので、例年に匹敵する力作が並びました。
①洗足学園高等学校:
チーム名「Artistic moss boll」
ゾウの親子がつくる未来の地球
洗足学園高等学校のチーム「Artistic moss boll」がテーマにしたのは、途上国への支援の在り方だ。ザンビア出身の女性エコノミスト、ダンビサ・モヨ氏の著書『援助じゃアフリカは発展しない』から着想した。
適切な技術提供こそが途上国の発展と地球全体を守ることにつながる――。そんな行動を追求する姿勢こそ不可欠だと考え、メインキャラクターの親のゾウが子ゾウに優しく水をかけながら地球を再構築していくさまを描いた。
「Artistic moss boll」はデジタルアート展示&発表会で、最優秀賞にあたる「上田バロン賞」を受賞した。審査した上田バロン氏は7月30日の表彰式で「強いメッセージが込められている点を高く評価した。特に単なる支援にとどまらず、途上国の自立を促す重要性を深く掘り下げた内容が印象的だった。一過性に終わらない持続可能なストーリーを描き出している」と話した。
「Artistic moss boll」のメンバーは表彰式後、学生取材班の取材に「まさか受賞できるとは思わなかった。校長先生をはじめ様々な方々からたくさん応援してもらったので、パネルとトロフィーを持ち帰ってよい報告をしたい」と笑顔をみせた。
②京都芸術高等学校:
チーム名「ホシズナ☆ペンタゴン」
風神様が届けてくれるもの
メインキャラクターに据えたのは「風神」だった。この風神様がどんな行動を起こしているかといえば、風力発電。世界中へ再生可能エネルギーを届けている様子を描き切った。
複雑な作品をつくるにあたってメンバー全員で様々なデザインを持ち寄り幾度も議論を重ねたという。キャラクターの美しさだけでなく「テーマをしっかり伝えられるようこだわった」。奥行きや影など細部まで丁寧に完成させ、躍動感あふれる作品へと仕立てた。
▲(左図)②京都芸術高等学校
(右図)③甲南女子高等学校▼
③甲南女子高等学校:
チーム名「SMCIIYAN」
サンゴの涙が伝える真実
環境問題のひとつであるサンゴの白化をテーマにした。海面上昇や海水の酸性化、河川の富栄養化など多くの要因がこの問題では指摘されている。
次世代に向けて問題の深刻さを伝えようとメインのキャラクターの女性が赤い涙を流している。メンバーのひとりは「注目点はキャラクターの哀愁ある表情」だと強調した。背景や色使いを含めてチーム内で試行錯誤を繰り返し、完成品として仕立てた。
④大阪府立港南造形高等学校:
チーム名「パブリックアート」
海遊館名物が得意なものは
普段は高校のパブリックアート同好会として活動する。高校の近くには海があり「海を守ることは自分たちが住む場所を守ることにつながる」と考えた。
メインキャラクターは、大阪にある世界最大級の水族館「海遊館」にいるジンベイザメ。ごみをリメイクするのが得意だという設定にし、バケツと海藻を組み合わせたアクセサリーを身にまとう。全体に描いた星の数は17あり、SDGs(持続可能な開発目標)の数と一致させた。
▲(左図)④大阪府立港南造形高等学校
(右図)⑤大阪府立港南造形高等学校▼
⑤大阪府立港南造形高等学校:
チーム名「BA,KUSYU」
LGBT支援のキャラ、着想どこから
大阪府立港南造形高等学校の「BA,KUSYU」は、ジェンダー平等の実現を作品のテーマに選んだ。表現したのは自分の身近にある自由な校風で、同校では例えば制服はリボンとネクタイ、スカートとスラックスを自由に組み合わせることができる。
生徒たちは「LBGTQ⁺のことをより身近な題材で考えてもらえるようなキャラクターをつくることに力を入れた」と話した。メインキャラクターは猫で「自由なイメージがある」と考えた。猫の目や外枠には「虹色」を取り入れたほか、性別にとらわれない見た目になるよう修正を重ねながら仕上げた。
⑥奈良市立一条高等学校:
チーム名「一条コトゼミ」
あえて目標設定せず
「SDGsは名前や看板だけになっていないか」――。キャラクターづくりにあたってこう悩んだ。チーム内での議論の結果、選択したのは「どの目標にも当てはめない」という決断だった。
メインキャラクターのカラーはSDGsのどの色にも該当しない紫を基調とし「幸せ」を花言葉に持つタンポポを頭につけた。手に持つピコピコハンマーはSDGsに自覚が足りない人たちをたたきおこすためだという。人々に「自覚」を促そうと独自の作品を完成させた。
▲(左図)⑥奈良市立一条高等学校
(右図)⑦関西学院千里国際高等部▼
⑦関西学院千里国際高等部:
チーム名「イカスぺ」
腹の中に潜む未来への警鐘
関西学院千里国際高等部のチーム「イカスぺ」がテーマに据えたのは、海のごみ問題への対応で、最も達成に遠い日本の課題と位置づけた。
キャラクターのモチーフはクジラ。腹の中をレントゲン写真でみると、飲み込んでしまったごみが描かれている。ARで映し出せば段々とごみが浮かび上がってくる構図にしており、問題の深刻さと危機意識がダイレクトに伝わる作品に仕立てている。
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デジタルアート展示&発表会
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