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日経STEAM
2024シンポジウム

レポート 日経STEAM2024シンポ

高校生14チーム「SDGs」
テーマに力作ずらり

~学生取材班がみたデジタルアート展示&発表会の軌跡(後編)

開催日2024年7月30日

「日経STEAM 2024年シンポジウム」が7月30日、大阪市住之江区のATCホールで開かれました。シンポの柱のひとつであるデジタルアート展示&発表会には、あわせて13校14チームが参加。持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにした作品で競い合いました。14の作品はいずれも3カ月ほどをかけて高校生自ら構想・企画し、完成品へと仕上げたもので、例年に匹敵する力作が並びました。

①愛媛県立松山南高等学校:
チーム名「メネラウスの仲間」

遺跡守る戦士が伝える思い

「メネラウスの仲間」が取り上げたテーマは「危機遺産」だ。具体的には戦争で破壊されたイラクの遺跡をイメージし、兵と対峙する戦士をメインキャラクターとして配置した。
遺跡を攻撃から守るという行動だけでなく、チーム内の根っこにあるのは心の底から平和を願う気持ちだ。メンバーのひとりは「重要な地球の財産である遺跡を守るため、戦争をなくすという意識こそ持ってほしい」と話した。

①愛媛県立松山南高等学校

(左図)①愛媛県立松山南高等学校

(右図)②神奈川県立厚木高等学校

②神奈川県立厚木高等学校:
チーム名「ATA78」

甲羅に込めた「叫び」

チーム「ATA78」がメインキャラクターに選んだのは亀だった。特にこだわったのは甲羅に描いた課題の数々で、紛争や労働問題、森林破壊といった要素をちりばめた。
亀のひれには海洋プラスチックごみを模様として施した。メンバーの一人は「ARを通じて横から作品を見ると、正面では暗い表情をしている亀が包帯の下で笑っている。デジタルアートだからこそのアイデアとその意味に注目してほしかった」と話した。

②神奈川県立厚木高等学校

③大阪府立住吉高等学校:
チーム名「S.Y.」

お稲荷さんが伝えるもの

大阪府立住吉高等学校の「S.Y.」のメインキャラクターは学生の姿をしたお稲荷さんだ。手に持つ巻物には「質の高い教育」、稲穂には「飢餓ゼロ」という願いを込め、いずれも優しく抱える様子を描いた。
しっぽの質感など細部に目を配り続けたといい、特に「キャラクターの背景として、ARを使いながら街へと続く一本道を描くのが難しかった」。次世代をいきる世界中の子供たちに平和な暮らしが訪れることを切に願う。

③大阪府立住吉高等学校

(左図)③大阪府立住吉高等学校

(右図)④奈良県立高円芸術高等学校

④奈良県立高円芸術高等学校:
チーム名「強いて言うなら、X」

持続可能な社会へもがくネズミ

作品づくりのきっかけは動画投稿サイト「YouTube」で、いわゆる「望まない妊娠」をしてしまった女性の姿をみたことだった。
中心に据えたキャラクターは科学実験などにも使われるネズミ。あえて継ぎはぎにし、背景に歯車を描くことで「人に使われる存在」との意味合いを込めた。矢印が循環していくマークをネズミの頭の上に配置し、持続可能な社会という理想の実現に向けてもがき苦闘するあらゆる層を表現している。

④奈良県立高円芸術高等学校

⑤愛媛県立八幡浜高等学校:
チーム名「ルーキーピカソ」

表と裏で別世界を表現

チーム「ルーキーピカソ」はARを使って表と裏、光と影の両面を表現した。まずは陸の緑、海の青、幸せを示す黄色をベースにキャラクターを作成。肉眼でみれば幸福感あふれる作品とした。
一方、ARを通した作品は別の顔を持つ。2枚目にそれまで隠れていた汚れた世界が映し出されるように仕立てた。メンバーは「ARを使わなければ見られないような構造にこだわった。実際に環境問題から目を背けている人にメッセージが伝わればと思った」と解説した。

⑤愛媛県立八幡浜高等学校

(左図)⑤愛媛県立八幡浜高等学校

(右図)⑥奈良県立奈良北高等学校

⑥奈良県立奈良北高等学校:
チーム名「すかいぺいんたー」

ロボットとつくる未来の地球

選んだテーマは、人類とロボットの「共創」だ。ロボットはこの先の未来で、人間の仕事を奪うだけなのか。「助けてくれる存在であってほしい」。チーム内で議論し、こんな願いを作品に込めた。
メインキャラクターのロボットは持続可能なエネルギーで動き、海中の水質改善を担う。手のひらの上で光輝くのは未来の地球だ。ARを使って作品を浮かび上がらせるために背景を10層にレイヤー分けしたといい「とても大変な作業だったけれど楽しかった」と振り返った。

⑥奈良県立奈良北高等学校

⑦大阪信愛学院高等学校:
チーム名「Colers」

アリクイが運ぶ命の希望

大阪信愛学院高等学校のチーム「Colers」がメインのキャラクターにしたのは、アリクイだ。アリクイの親は人間の赤子を背中に乗せて外敵から守る。
作品上の「敵」はウイルスや病原体と仮定した。メンバーに苦労した点を聞くと配色だったといい、例えば青は傷が癒えるイメージ、ピンクは優しさを表現できると考えた。「このアリクイのように子どもを守る意識をみんなに大切にしてほしかった」と語った。

(左図)⑦大阪信愛学院高等学校

⑦大阪信愛学院高等学校

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