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日経STEAM
2024シンポジウム

レポート 日経STEAM2024シンポ

高めたスキル、深めた絆
~四天王寺高校
日経STEAMシンポを終えて

7月30日に開かれた「日経STEAMシンポジウム」(主催:日本経済新聞社大阪本社)。実際に参加した高校生や先生たちはどのような思いを抱き、シンポジウムを通じて何を感じとったか。四天王寺高等学校のチーム「Eやん(えぇやん)」は、学生サミット未来の地球会議のプレゼンテーションにのぞんだ。チーム内の結束をはじめ手応えと入賞には届かなかった課題。この双方をしっかりと胸に刻み、再び前に進み始めている。(聞き手は日本経済新聞社大阪代表室 山田宏逸、上杉和也)

開催日2024年7月30日

高めたスキル、深めた絆
(四天王寺高校)

四天王寺高校のチーム「Eやん(えぇやん)」。右端が同校の本田泰久教諭

Q. 日経STEAMシンポジウムに参加して率直な感想は。
頑張りましたが、結果はなかなかついてきませんでした。

Eやん(えぇやん、以下Eやん):おととしのシンポで、四天王寺高校の先輩チームが女性専用車両をテーマにしたプレゼンテーションをし、良いところまで行ったと聞きました。わたしたちもそれを追うようにと意気込んでみたのですが、結果、難しかったです。


チームで取り上げたのは「女性の働き方」やライフプランの描き方でした。ほかの高校のプレゼンを見ると、独自の実験や調査を通じて具体的に数値を示し、解決策を提示していました。テーマが広く大きかった半面、なかなか他校のような客観的なデータが少なかった。もちろん悔しかったけれど、一方で冷静に課題も浮き彫りになったと思っています。

手の震え止まらず

Q. 当日は緊張しましたか。

Eやん:昼休みの時間に入る前、午前中の一番最後の出番でした。出番が来るまで、午前中はずっとドキドキしていました。学校以外で大人を前にしたプレゼンの機会はほとんどなかったので。中学、高校を通じて一番の緊張レベルだったかなと。手の震えがとまらなくて……。

Q. テーマ設定に当初、悩んでいたように見えました。

Eやん:そうなんです。教育格差の問題のほか、日常的に家族の世話や介護を担う「ヤングケアラー」の問題なども取り上げようと考えたのですが、調べ始めてみると間に合わないのではないかと。みんなで意見を出し合うなかで、一番話が進むなと感じたのが、最終的には今回の「女性の働き方」についてだったんです。


いずれにせよ、シンポジウムに向けてみんなでちゃんと話し合いができた。チームワークは磨かれた、絆は深まったと思っています。


本田泰久先生(以下、本田先生):最初はテーマについて詰め切れていない印象でしたが、リサーチなどを通じて女性の働き方への理解が深まってきたように感じました。問題を「自分ごと」として捉えて、自らの将来にも関連すると気付いたとき、意識が大きく変わっていったように見えましたね。

Q. 働き方改革や仕事と子育ての両立策に取り組む企業に自ら取材に行ったのですね。

Eやん:子育てのために給与体系を改めるといった工夫をし、育休取得率が男女ともに100%という企業でした。わたしたちはまだ社会には出ていないので、実際に現場を見て話を聞くことでより理解が深まると考えました。


ただ実際に、シンポの会場で審査員の方から指摘を受けました。「あまり制度が整っていない会社には行って話を聞かなかったの?」と。その場でみんな「確かに」と思ってしまった。これは事実です。働き方や女性の活躍推進に悩んでいる企業にもっと話を聞くことができればよかった。テーマ設定に揺れてしまったぶん、調査や分析に十分な時間を割けなかった。この点はやはり否めません。

推敲重ねたプレゼン

Q. それでもみなさんの顔をみていると「実り」も多かったように感じます。
手応えの部分はいかがでしょう。

Eやん:プレゼンのしかたについては結構、こだわりました。制限時間4分のなかで、いかに重要な部分を的確に伝えられるか。まずは原稿作成の段階で、推敲に推敲を重ねました。


いざ原稿ができても、練習を録音してみると「テンションが低くないか」「淡々としすぎて聞く人の耳にすっと入ってこないのでは」など、改善点がいくつも見つかりました。どこの単語を強調しようか、ジェスチャーをどう入れようかと、みんなで話し合いながらまた推敲しました。おかげで人前に立つことはあまり「苦」ではなくなりました。

Q. 高校生活、これからの人生の糧のひとつになればと願っています。

Eやん:とても良い経験になりました。事前のミーティングや会場でいろいろな高校の生徒とも話すことができました。話すことで、物事を判断する客観的な視点が養われるように思います。


わたしたちはこの部活(ESS=イングリッシュ・スピーキング・ソサエティ)も引退なので、バトンは後輩に託します。次回からは他校との合同チームもあると面白いかもしれませんね。


本田先生:他の高校と接することができるのは新鮮で、刺激的ですよね。いわゆる「井の中の蛙(かわず)」にならないためにも。個人的には「学び」は単なる知識の獲得だけでなく、実際の問題解決に直結するような活動の中にあると思っています。来年以降はESSだけでなく学校全体で参加者を募ってみようかと。あとは願わくは賞がとれれば……。これは余談です(笑)

四天王寺高校のチーム「Eやん」。写真左から木下明咲さん(同校2年)、辰己叶羽さん(同)、酒井佳穂さん(同)、田中美羽さん(同)、崎原世雅さん(同)

「探究」の歩みは止めない!
~奈良市立一条高校 日経STEAMシンポを終えて

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